Interview
Lui Araki 荒木 塁
写真の再利用

本誌28号にて取材させていただくことになったスケーターで、写真家の荒木塁。大技を繰り出すわけではなく、細かな技と緩やかな滑りをミックスさせる。簡単にしているようで技術もセンスも問われること。荒木塁だからこそのスケーティングは憧れでもある。その空気感から撮られる写真は忘れていた感覚を呼び起こすような強さがある。写真家としての視点は唯一無二で、その手法も誰も真似することができない。今回は数ヶ月前に引っ越したばかりの新しい作業場兼自宅にて話を聞かせてもらうことになった。
偶然から生まれる感覚を大事に

ZOOYORKに所属された経緯から教えてください。
90年代にZOOYORKが好きだったので、日本の代理店にいたZOOYORKのライダーの一人に頼んで話を通してもらい、ビデオを見てもらって入りました。自分から積極的にアプローチすることはないですが、この時は自分から動きました。
独特なスケートスタイルは意識されていますか?
意識していません。感覚を大事にしています。昔は普通の技もガンガンやっていたんですが、歳をとるにつれて膝やその他の体のトラブルで回し技ができなくなってきました。そういう変化で徐々にスタイルが変わってきました。今のスタイルは自然に形成されたようなものです。技の難易度よりも、技を出すタイミングなどを気をつけています。スケートをして遊んでいるときにアイデアが多く浮かびますね。
写真は並行して撮っていたんですか?
はい、写真の方が早くから好きで、小学生からずっと撮っています。最初は使い捨てカメラを使用していて、高校のときに親に頼んで、コンパクトカメラのオリンパス“ミュー”を買ってもらいました。その時は良い写真を撮ろうとは思っていませんでしたが、ただの記録や思い出として友人たちを撮流のが好きでした。
現在は現像やプリントも自身でされますよね。
写真を撮り始めて少ししたらデジタルが流行り始めていて、デジタルでも撮影していました。しかし、ある時、撮った写真を見返してみると、自分は完全にフィルムの写真が好きだと感じ、デジタルでの撮影をやめることにしました。その決断をしたのが26歳のときでした。31歳のときにはモノクロ写真のプリントを始め、そこから4年後にカラープリントを始めました。
失敗することも多かったと。
はい。でも、そのときから少しずつ写真展に誘われるようになりました。最初はカラーの良いプリントができませんでした。そのため、「1年ちょっと修行していいですか」と皆に伝えて待ってもらいました。その後、試行錯誤を繰り返し、最終的に展示できるレベルのプリントを作るまでに5年かかりました。それからようやく、自分で満足のいくプリントができるようになりました。
その独特のリズムも塁くんならではですね。機材は何を使われていますか?
今のメインはライカのMPで、あとはM6のM3ですね。その前はCONTAXのG2を使っていました。望遠はライカの135mmを使っています。
シャッター切るときはどんなときが多いですか?
本当に感覚ですね。
スケートしてるときも撮っていますか?
スケートの写真はあまり撮らないんですけど、スケーターといるから彼らの写真はいろいろ撮っています。
空を撮ったりするときはどんなときですか?
あれはスケートツアーで海外に行ったときです。海外に行ったら日本にいるときよりも撮ります。みんなで歩いてるときにストリートスナップを撮ったりもしてます。
海外はスケートツアーが多いですか?
だいたいスケートで海外に行っていて、写真だけを撮りに行ったことはないですね。
行ってみたいところはありますか?
行ったことないところだったらキューバやインドに行ってみたいです。古い街とかは好きですね。なんか撮りたくなる。香港は古いものと新しいものがミックスされていて、めちゃくちゃ好きです。ご飯も美味しいし。
仏の〈Magenta Skateboards〉との関係を教えてください。
僕らが日本で制作していたスケートビデオを海外の人たちが見ていて、フランスから来た時にInstagramで連絡をくれました。最初はチームには属していなかったのですが、影響を受けたスケーターとしてゲストボードを出すというオファーを受けました。そのゲストボードが10年前に1本リリースされた後、昨年もフランスに行き、撮影してきました。その際、撮影に集中するため無駄な滑りをせず、体力を温存しました。
テスト写真について教えてください。
続きは本誌28号「ONLY ONE」にてご覧ください。
LUI ARAKI|荒木 塁
プロスケーターでありアパレルブランド〈L.I.F.E〉のディレクター、またフォトグラファーと多岐にわたり世界中で活動している。90年代後半~00年代にかけてNYCの〈ZOOYORK〉に所属し、その後もフランスのブランド〈Magenta Skateboards〉からゲストボードをリリースするなど、洗練されたスキルと独自のスタイルは海外からも非常に評価されている。 またフォトグラファーとしての活動は、国内外の風景や人物をフィルムで撮影し自家現像や自宅の暗室でプリントを行うというこだわりで数々の作品を残す。また培った経験値で様々なアートプロジェクトも手掛ける。

photo. Takeshi Abe
interview&text. Taishi Hikone






