- KiNARI 編集部

- 9月24日
- 読了時間: 8分

80年代から渋谷のカルチャーの中で移り変わりを体感してきたカメラマンであり、編集者でもある米ちゃんこと米原康正氏と、裏原宿の創世記からのストリートブランドに特化して他にはない商品展開で国内外問わず注目されている古着屋「BLUE ROOM」の若きオーナー、羽月基と古着と雑誌から広がる世代を超えたカルチャーの話
—— 今回の対談のキッカケになった80年代にスタートしたUKブランド〈Anarchic Adjustment〉にどのようにつながりましたか?
米原康正:1988年だったかな、伊藤穰一に誘われて彼の作ったNEOTENYという会社に入社。僕は全くデジタル分からないので、出版的なものをやっていました。そこで、ジョイ(伊藤穰一)にティモシー・リアリーを紹介してもらったのがニックへとつながるのかな。西海岸のサイケデリックカルチャーで面白いのがいるんだよって、ティモシーに紹介されてその時副に編集長をやっていたPUMPという雑誌や、友達の大野君が編集長やっていたFineで特集組んだのが始まり。
—— よねさんとニック〈Anarchic Adjustment〉が仲良くなったのはそういう流れなんですね。PUMPという雑誌も羽月氏から聞かされなかったら全然知りませんでした。
米原:僕が副編集長やってた最初はカウンターカルチャー専門のすごくマニアックな雑誌だったんだけど。途中で方向性変わって、すごいカタログ本みたいになっていった。僕は立ち上げから方向性が変わるまでの2年ぐらい関わっていました。
羽月基:神保町の古本屋さんでPUMPを見つけて、ショーン・ステューシーのインタビューだったり、スラム・シティスケート、後半に店名の由来となったジ・オーブの記事があったりなど僕にとっては大当たりでしたね。米原さんが携わっていたと知って本当にびっくりしました。
—— PUMPの存在は知っていましたか?
羽月:元々知らなくてアナーキックに関しての資料が載ってそうな雑誌をとりあえず買うみたいな買い方をしていた時期がありました。主に90年から94年あたりに絞って買っていて、その中で出会いました。
—— では、〈Anarchic Adjustment〉を最初に知ったのは?
羽月:最初はAKIRAでしたね。高校生の時に漫画のAKIRAを読んで衝撃を受けて、兄貴にも読ませたらTシャツを買ってきたんです。何枚かある内の一枚がアナーキックの物でした。Tシャツのタグを見てカッコいいと思ったのは初めての経験だったのでとても印象的でした。
米原:AKIRAは当時あまり人気がなかったのよ。みんなが知ってるような漫画じゃなくて、普通の人は全く騒がないような漫画だった。だから、アナーキックのTシャツにカプセルが大きくプリントされたときに、やられたと思いました。なんで外国人にやられるんだろうってことが素直な意見だった。そこから、どんどん一人歩きしてAKIRAがすごいみたいな話になってきて。そこからAKIRAって何?って。
—— でもファッションとは結びついていませんでしたよね。
米原:そうだったね、大友さんのアニメはニッチなのよ。アナーキックの面白い話があって、宇宙船がグラフィックに使われていくようになっていった。その80年代にセカンドサマーオブラブが起きて、ニックもサマーオブラブに浸かるようになり、Tシャツがいきなり宇宙人になった(笑)。
羽月:(PUMPを見ながら)このページ大好きですね。
米原:このページは俺が作ったの。このコラージュあたりはネオテニーがお手のもんだから。この宇宙人のシリーズは売れてないかられ探すといいんじゃないの?
羽月:今は人気で高いですね。相場が5万円ぐらいで、状態が良ければ10万円近いものもあります。
米原:えー持ってたのに。。。羽月君はアナーキックと出会ってから、どうやって90年代の古着に特化していったの?
羽月:高校1年の時に雑誌のアイスクリームでスケートシング特集が発売されて、日本のストリートウェアについて興味を持ちました。藤原ヒロシさんをはじめとした、様々なデザイナーの事はその本で認識しました。専門学校に進学してからは図書館で昔の雑誌が読み放題だったので、ひたすら読んでいました。その中でより90年代の日本のカルチャーを掘るようになりました。
米原:今の服飾の子ってギャルっぽい子やアイドルの人もいるよね。もともとは変な格好してるのが服飾の子で、美容師もそうだったのよ。途中からギャル文化になっていって、服飾や美容師にもギャルが増えだした。変だけどメジャーに憧れてるみたいな人たちの方が多くなってきた時期で、アンダーグラウンドが好きな人たちが行くような場所だったのに、メジャーになっちゃったね。
羽月:僕よりはもう少し上の世代かもしれないですね。今でももちろんそういう方はいるとは思いますが、僕が在学していた時期は中々90年代の文化で盛り上がれる友達は出来ませんでした。
米原:もっと変な人たちがいっぱいいた気がする。

—— 最初の実店舗はいつからスタートしましたか?
羽月:原宿のマンションの一室みたいな所でやったのが2019年で6年前で、その頃は。。。
米原:まだまだでしょ。アーカイブみたいな言葉が出はじめたぐらいで、
羽月:はい。GOODENOUGHとかは同世代ではほとんど認知されていなかったですし、古着という括りにも入っていなかった気がします。上の世代の人たちのものっていう感じがありました。僕らが手を出す隙がない服というか。でもそこに絞ってやりたかったんです。世界観をつたえるために店頭でもInstagramでも雑誌と服を並べながら説明していました。スタートした頃は中々大変でしたね。
—— お店をスタートした当時と今との変化は?
羽月:着実にスタートした頃と比べると昔のカルチャーに興味を持つ若者が増えたと思います。当時を体験したことがないからこそ出来る着こなしだったり、お客さんから得れる発見もあったりしますね。
米原:なるほどね。最終的な古着の在り方みたいなところって。どんな感じだと思う?このお店自体の在り方、古着だから売れたらなくなっちゃうじゃん?さっき言ったみたいに。
羽月:古着は減りながら増えてるとも思うんですよ。その時々でナシだった物がアリになったりとか。それを発見して提案していくのが古着の醍醐味だと思います。自分が好きな物を置くという芯だけブレないようにしたいですね。本店である「ブルールーム」、「サマーオブラブ」ではストリートウェアとデザイナーズをフラットに見てもらえるように意識しています。僕が藤原ヒロシさんに受けた影響で大きい部分はミックスする感覚なんです。セディショナリーズにヤンキースのスタジャン、エルメスとステューシーを一緒に紹介したり。文脈を意識しながら、そういった楽しみ方が出来るお客さんが増えたら嬉しいですね。
米原:それ(藤原)ヒロシくんもそうだけど、その時にラストオージーを一緒にやってた山本康一郎ってスタイリストがいるんだけど、その感覚って彼なんですよ。その時にストリートとハイブランドを出すことをやりだしてる。たぶん一番早かったと思うんだよ。ちょっと調べてもらえると面白いことになってくるよ。ハイブランドをストリート系と一緒にするなんてありえなかったからね。面白い話があって、ベルサーチがアベイシングエイプとコラボしたのよ。ハイブランドとコラボするのが最初のストリート系のブランドだったんだけど、なんでベルサーチとコラボできたかっていうと、ベルサーチの買い上げを見ていたらNIGOが1位で、これは誰だって調べたらこういうブランドがやってるので、ベルサーチの方から声がかかったっていう話を聞いたけどね。実際に六本木ヒルズに住んでる時にベルサーチの部屋があって、家具から全部ベルサーチだよ。
羽月:僕らもこういった洋服をY2Kや、90sアーカイブみたいな打ち出し方をしたら、一時的な消費になってしまって、何年も続けられることではなくなってしまうと考えています。僕はいつでも着たいと思ってもらえる古着のクラシックとなってほしいと思っているので、そういった見せ方をしたいですね。米原さんの所有している洋服達を僕なりに編集して並べるのは楽しそうです!
そんな羽月氏の熱い思いを受けて、米原氏はひらめきました。「僕や、当時青春を過ごした仲間たちのクローゼットには、まだたくさんの洋服やアイテムが眠っているのではないか?」それらを羽月氏独自の感性でキュレーションし、ただ懐古的に語るのではなく、新たな視点と感覚を加えて現代に蘇らせれば、当時の洋服の魅力をもう一度、多くの人に楽しんでもらえるのではないか。そして2025年10月。そんな二人の想いから生まれるイベント「YESTERDAY FOR TOMORROW」が開催されます。90〜2000年代初頭の裏原を中心とした古着やアイテムの展示販売は、羽月氏による現代視点のキュレーション、そして米原康正氏と他参加メンバーの私物古着も展示販売される予定となっている。両氏の他に、当時のファッションカルチャー誌を扱う移動古本屋「tunless melody bookstore」、当時のガジェットをレストアカスタムして現代に再提案する「stablity」、当時の紙ジャケットのVHS中心に販売する「LIPIT-ISHTAR」が参加予定。90年代のストリートカルチャーを愛する人、研究している人、そして当時青春を過ごした人や、憧れていながらも手に入れられなかった人まで。世代も背景も超えて、多くの人々を魅了する特別なイベントとなるでしょう。

現代へとつながるルーツストリートファッションを現代のへと循環させ、新しい解釈をもって再提案されます。もちろん当時を知るOG世代にも、懐かしい思い出とともに楽しんでいただけること間違い無し。また今回はゲストポップアップショップとして90年代のカルチャーを現代へ再提案している話題の3社も参加決定!
YESTERDAY FOR TOMORROW!
場所:ROOM MATE HARAJUKU
東京都渋谷区神宮前2-32-5 Bprスクエア神宮前 I B1F
日付: 10月4日 , 5日(土、日)
時間:11:00~19:00
YESTERDAY FOR TOMORROW! PRE-SHOW
場所:ROOM MATE HARAJUKU
東京都渋谷区神宮前2-32-5 Bprスクエア神宮前 I B1F
日付: 10月3日(金)時間:未定
プレショーと題して、チケット制のイベントが予定されています。
詳細、入場方法は後日NATAL DESIGNのインスタグラムからアナウンス!!
interview by Shinsuke Gotoh (NATAL DESIGN)
photos & text by Taishi Hikone (KiNARI)

















