新しい年が明けてからあっという間に1ヶ月が過ぎてしまった。今年はしっかりと物事を前に進めていきたいと決意していたことを思い出し、まずは習慣が人を作るというどこかで聞いたことを実践すべく趣味の映画鑑賞の日記をつけていくことにしました。拙い知識で評論する気は全くなく、純粋に感想日記になってしまうけど、“面白かったという気持ち”を伝えることができたら良いなと思ってます。ぜひハードルを下げて読んでください(笑)。



※以下、映画「ヤクザと家族 The Family」の内容に触れる箇所があります。事前に内容に触れたくない方は観賞後にお読みください。また映画館に行く際はコロナウイルスの感染対策を実施し、各地域のコロナウイル感染状況などを踏まえ鑑賞のご判断をしてください。



先日、1/29日より全国の映画館で公開されている『ヤクザと家族 The Family』を観ました。昨年『新聞記者』で日本アカデミー賞を6冠受賞した藤井道人監督率いる製作陣が俳優の綾野剛さんを主演に迎え、時代に取り残されるヤクザ達の姿を3世代に渡って描いた作品。最終的な感想をはじめに言ってしまうと、めっちゃ良い映画でした。



2時間16分にわたる長尺だけれど、その長さを退屈に感じることはなく、映画に映し出されるすべての映像に惹きつけられ、リズムがあり、任侠映画なのにスタイリッシュ。特にオープニングのタイトルバックはこれからの映像作家のほとんどが目標にするんじゃないかと思うぐらい最高で、日本映画の過去と現在をつなげた歴史に残るオープニングなんじゃないかと思いました。カッコ良すぎる…!

撮影や物語の進行と同様に素晴らしかったのが、役者さん達の演技です。豪華俳優陣のそれぞれの演技を観れて幸せだったのですが、特に主演の綾野剛さんは凄かった。刃物のように鋭い目をした95年、ヤクザとして頭角を表し成熟を感じさせる2005年、流れた時の重みと侘しさが身体に刻まれた2019年と、山本という男がまるで物語の枠を超え実在しているかのような説得力でした。圧巻だったのは中盤のあるシーン。事態を理解しようと一歩ずつ歩を進めると同時に目に涙が溜まっていく演技は圧倒的で、この場面だけで最高の映画体験をしたと思いました。そして、こんなに移ろいゆく空が画になる俳優は他にいるのかと思うくらい、全編を通して綾野剛さんの画的な格好良さが印象的でした。(過去主演作の『そこのみにて光輝く』を観た時も空の下の姿がカッコ良かったので、改めて思いました。若干話はそれますが、俳優の後ろ姿をカッコよく撮る映画は個人的に良作説があります…。『クリード』とか。他にぱっと思い浮かぶのが少ないけど(笑)。


脇を固める俳優の方達も本当に素晴らしく、特に自分が印象に残ったのは市原隼人さんと、磯村勇斗さん。市原隼人さんはめちゃくちゃ良い俳優さんだと改めて思ったし、磯村勇斗さんはこんな良い俳優さんがいたのかとびっくりしました。 磯村さんは既に大活躍されているようですが、近年テレビを全然観ておらず…。あまり存じ上げていませんでした。申し訳ございません。改めてこれまでの出演作を観たくなりました!


また、個人的におっと思ったのが舞台設定です。静岡にある架空の地方都市を舞台に描かれた本作は、同県出身の自分にとって懐かしく、時代と共に寂れていく街の悲しさと海や山の自然の美しさが混ざっている景色が印象的でした。物語後半の中心となる磯村勇斗さんは静岡の沼津出身らしく、出演は「舞台となる土地の匂いや空気感を体内に宿していたことも決めてとなり~」(公式パンフレットより引用)とも書いてあり、確かに、ああいう人いるかも、と思いました。なんというか、ぶっ飛んでても、海の穏やかな揺らめきと似合う、鋭さと柔らかさを合わせ持った感じ、です。

そして綾野剛さんが着ていた冒頭のセットアップ、90年代を象徴するThe North Faceのヌプシダウンのホワイトモデルの下に、和柄のシャツを挟んでタートルネックを着込んだ姿が、港町のヤンキーが作り上げたオリジナルスタイルのように見えてカッコ良かったです。

正直に言うと、2020年を経た今、日本のマスエンターテイメントを取り巻く状況にがっかりし、観る気が起きなくなっていました。映画やドラマの中よりも大変なことが現実で起こっているのに、それに対して行動を示す作家は少なく、自分たちの声となる作品の中でも問題を描こうとしない。新旧様々なコンテンツが配信サイトから簡単に手に入り、その名作のほとんどを見る時間もないのに、当たりさわりのないものを観る必要って何…?

もちろん声を上げづらいのはわかるけど、多くの人にメッセージを届けることができるのに、大手放送局やスポンサーの方ばかり見て愛想よくしている芸能人をなんでパンピーの俺らが付き合ってチヤホヤしなきゃなんないんだ? と、いろいろ思ってしまっていました。

けれどこの作品を観て、日本のエンターテインメント業界には本当にかっこいい作り手達がいることを思い出しました。藤井道人監督は、前作『新聞記者』で日本社会の問題を真正面から描き、今回も一級のエンターテイメント作品を作りながらも時代に取り残されていくマイノリティ側に立って丁寧に描いています。

『ヤクザと家族 The Family』の公式パンフレット冒頭に、本作のプロデュースを務めた株式会社スターサンズ河村光庸さんのコメントが寄せられているのですが、いまの時代に文化・芸術を作っていくことについて話されていました。こちらもぜひ手に取って読んで見て欲しいです。出演を即決しがたいテーマに参加することを決め、全力で作品を作り上げた俳優さん達ももちろん含め、本作品を作り上げた人たちにとても感銘を受けました。

改めて映画って素敵だなと思いました。登場人物2人のこれからを想ってしまう切なくて綺麗なラストシーンも最高だったな。



Masaharu Ono

通信教育で中学・高校の国語の教員免許を取得した後、海外アパレルブランドの日本代理店に就職。PRなどのバッグオフィスを担当後、フリーランスのエディター・ライターとして活動。NBAフリーク。